Image credit Mike Lemanski
時間はどんな力も止めることができず、それに応じてこの世に生を受けた者は歳をとっていきます。
しかし全ての人は歳を公平に取っていきますが、人によって若く見える人や、年老いて見える人がいることを経験したことはないでしょうか?
私も2019年のサンタローザでのIRONMANのレースの時にランの部分で最後の10kmほどを一緒に走った人がいるのですが、その人がとても若く感じました。
その人は私より10歳ほど上の方で(レースではふくらはぎに年齢を書くので皆の歳がわかる)、20Km地点位からほぼ同じペースで走っている人がいました。抜きつ抜かれつという感じで走っていたので話す機会があり、結局最後の10km(1時間近く)を一緒に走りました。
彼は、既に12回のIRONMANのレースを完走しており、その前のレースは2週間前というのでびっくりしました。その人は私より年上というのは解っていたのですが、実際の年齢を聞いてびっくりしました。
一体何が人を若く見せたり、逆に年老いたりみせるのでしょうか?
実際の年齢よりも若く見せる、もしくは若返ることはできるのでしょうか?その秘訣を見ていきます。
年齢
年齢を表すのに3つの種類があるといわれます。一つは「暦年齢」、そして「生物学的年齢」。もう一つは「主観的年齢」です。この3つの年齢を見ていきましょう。
暦年齢(Chronological Age)
誕生から暦に従って数えた年齢。満年齢ともいわれています。ですので、誕生日を迎えた数が暦年齢になります。20回目の誕生日を迎えたら暦年齢20歳ということです。
生物学的年齢(Biological Age)
身体機能低下から推定される年齢のことで、これらは皮膚の弾力性、血圧、肺活量、握力などの年齢関連のバイオマーカーを調べることで測定できます。
これは人の加齢による身体の老化は時間の経過(暦年齢)が直接関係しているわけではない、という前提に基づいています。すなわち、ヒトの老化は必ずしも個々がが同じスピードでおこるものではないということで、暦年齢とは違う年齢を判定するための指標です。
主観的年齢(Subjective Age)
自分が感じる年齢のことです。ある人は暦年齢よりも若く感じる人もいれば、歳をとっていると感じる人がいます。
例えば、IRONMANのトレーニングで、身体能力がピークの時は10歳ほど若く感じる時があると思います。逆に病気をして体が思うように動かないときは10歳ほど年を感じるかもしれません。その自分が感じる年齢のことを主観的年齢といいます。
要は、自分自身が客観的にみた年齢で、「気持ちの年齢」ということができます。
今回のテーマはこの主観的年齢になります。
暦年齢より若く感じることのメリット
「あなたは何歳と感じますか」と尋ねると、多くの人は身体的および精神的健康の状態から答える傾向があるようです。 これは単純な質問ですが、答え方によってその人の状態がわかる有益な情報を得ることができます、とFlorida State University College of Medicine(フロリダ州立大学医学部)の医学教授であるAntonio Terracciano(アントニオ・テラチャーノ)と言っています。
最近の研究では、年齢より若く感じる人は、一般に年をとる人よりも健康で心理的に活力があることが解っています。
メリット1:健康な人が多い

2014年にノルウェーで行われた、40~79歳(2471人)の5年にわたる追跡調査で、主観的な年齢認識が、各年齢枠でどのような変化があるか、また歳をとるにつれてその認識がどのように変化していくかの調査です。
結果は、どの年齢枠でも健康な人ほど年齢認識が若いという結果になり、最高齢枠が若く感じる年齢差が大きかったという結果になっています。
メリット2:うつの症状が少ない

2014年に中国で行われた、40~79歳(609人)の主観的年齢とうつの症状の調査で、主観的年齢が若いほど、うつ症状が少ないという結果になっています。
メリット3:認知症リスクが低い

2014年のアメリカでの調査です。これは、50~75歳の1352人の男女の主観的年齢と認知機能の関係の調査で、主観的年齢が若く感じる人は記憶力のテストで良い点数をとる傾向があり、認知機能低下のリスクが低いという結果となっています。
メリット4:脳が若く病気が少ない

2018年に発表された研究では、韓国の研究者が68人の健康な高齢者の脳をMRIでスキャンしたところ、年齢より若く感じた人は脳の神経細胞が集中する神経組織「灰白質」の密度があつく、年齢に関連した病状が少ないことを発見しました。
灰白質の神経細胞は記憶能力や運動能力に影響を与え、加齢とともに衰えることで、脳の老化の要因となるということです。ですので、気持ちを若くもつというのは重要なことといえます。
暦年齢より老いて感じることの問題点(デメリット)
次に暦年齢よりも年を取っていると感じる人を見てみましょう。
問題点1:入院する確率が高い
自分が年を取っていると感じている人は病気で入院する確率が高いと言う結果があります。
2016年の研究で、24歳から102歳までの人約1万人の比較をしたところ有意な結果がでたようです。

問題点2: 認知症になりやすい
2018年の研究では、65歳以上の4262人の被験者に、主観的年齢と認知症の分析を4年追跡調査した結果があります。
主観的年齢が高いと認知症になりやすいという結果になっています。

問題点3:死
2018年の1万7千人以上を対象にした追跡調査では、主観的年齢が高いと死亡率が高いという結果になっています。

健康になるための秘訣
主観的年齢の研究は、人の感じ方と健康状態との関連に基づいているため原因と結果を確立することができません。
例えば、若いと感じることで実際に人が健康になるのか、もしくはすでに健康な人が若いと感じるのか、などは明らかではありません。
しかし、人々に暦年齢よりも若く思わせることで、実際に身体的能力があがるということもあるそうです。
例えば、2013年の実験では、同世代の人よりも強いと言われた後に握力の検査をすると大幅に向上したという結果がでています。

また、2018年の中国での研究では、被験者が自分の年齢よりも記憶能力が高いと言われたグループが、良い結果を示したことがわかりました。

これらの研究から、若く気持ちを持つ、ということは肉体的にも心理的にも非常に有効だと思います。
若い気持ちを持つことで健康で幸せになり、人生を楽しく過ごすことができるのであればそれは素晴らしいことではないでしょうか。
まとめ
人々は毎年歳を取っていきます。これが暦年齢です。また歳をとることにより、肉体が衰えていきますが、肉体の老化の指標が生物学的年齢です。
そのほかに自分が何歳だと思うかという主観的年齢があります。
自分が暦年齢よりも若いと思うことで、身体の能力が上がり、気持ちに張りがでて、そして認知症にもなりにくいというメリットがあるとの研究があります。
逆に、自分は歳をとっていると思うことで、病気になりやすくなったり、死亡率が高くなるという結果もあります。
よく食べることや運動などの健康的な習慣は、若さを保つために重要なのは周知の通りですが、同様に重要なのは、前向きな姿勢を保つことではないでしょうか。
自分が若いと思うことで、健康になれるのであれば、それは歳をとっていく上で重要なことと思います。
また心理的な影響を見ると、主観年齢の低い人ほど、将来の自分について前向きな見解を持っていることが分かっています。
さらに死の危険を含む重要な健康問題が、主観年齢によって予測できることが、複数の研究から判明しています。
これからは暦年齢と寿命の関係をみるよりも、主観年齢と寿命の関係をみるほうが説得力がある時代がくるのかもしれません。
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