どのようなスポーツをやるにしても、筋力トレーニング(以下、筋トレ)は必要です。
例えば、マラソンのトレーニングでいえば、ただ走ればよいというわけではありません。脚の筋力の持久力を高めるための筋トレは必要ですし、走っている時のフォームを保つために体幹トレーニングなども行う必要があります。
もっとも、筋トレを絶対取り入れなくてはいけないというわけではないですが、フルマラソンやウルトラマラソンに挑戦したい、また怪我をしたくないというのであれば、筋トレは大事な要素になってきます。
筋トレをせずに、毎日走るだけのトレーニングをしていれば、かなりの確率で膝や足首、もしくはふくらはぎの故障を誘発するでしょう。
特に、これからマラソンに挑戦しようというのであれば、自分にあった筋トレを取り入れてやっていくのが重要だと思います。
まずは筋力アップというよりも怪我をしないために筋トレをするという意識で始めてはいかがでしょうか?怪我をした時点で、そのスポーツができなくなるわけですから。
ということで、今日は数あるトレーニングの中で、プライメトリック トレーニングを紹介していきます。
トレーニングの種類
トレーニングでの筋の収縮形態に基づく分類は,主に4種類あります。等尺性収縮によるアイソメトリックトレーニング(isometric training),短縮性収縮によるコンセントリックトレーニング(concentric training),伸張性収縮によるエキセントリックトレーニング(eccentric training),伸張-短縮サイクルによるプライオメトリックトレーニング(plyometric training)の4つに分類されます。
今日はこのうち、プライオメトリックス トレーニングを詳しく取り上げますが、その他のトレーニングも関係してくるので、簡単に説明します。
アイソメトリック トレーニング
これは、身体の一部をある状態で止め、重量を数秒間保つというトレーニングです。関節の角度を一定に保つことで、筋の長さを保つ(等尺性)トレーニング方法です。
注意点:血圧の上昇が起きやすいので、高齢の方や血圧に異常のある方は注意。
コンセントリック トレーニング
これはアイソメトリックと逆に、関節の角度を動かしながら筋肉の収縮を行うトレーニングです。懸垂でいえば、筋の長さを短縮させて、上に上がる筋肉の状態のことです。
エキセントリック トレーニング
これはコンセントリックと同じですが、懸垂のトレーニングでいえば、筋の長さを伸張させながら、下がるときの筋力の状態です。
プライオメトリックス トレーニング
短縮と伸張の両方の筋力運動の交互反復(stretch-shortening cycle)によるトレーニングの方法です。
バスケットボールやバレーボールなどジャンプと着地を頻繁に行うスポーツ、また陸上短距離のように、爆発力を要する競技で積極的に取り入れられています。
具体的なトレーニング例としては,高い所から飛び降りて着地した後に,すぐにジャンプをするというような動作です。
ただ、後述しますが、このトレーニングは筋や関節に大きな負担がかかるので、最初から無理をせずにゆっくりと行うか、トレーナーの指示の下行うのがよいと思います。
プライオメトリックの語源と歴史
プライオメトリックスという言葉は、ギリシャ語の「plio」という「もっと」とか「増やす」という言葉と、「metric」という「測る」という言葉の組み合わせです。ですので「測定を伸ばす」という意味でしょうか。
プライオメトリックスという言葉が出てくる前、このトレーニング方法の元になったのは、ジャンプテクニック(ショック メゾット)です。
これは、1960年代後半にロシアのユリー ヴェルホシャンスキー(Yuri Verhoshansky)が提唱した方法で、特徴のあるジャンプテクニックを用いると瞬発能力が高まるとという考えです。
後に彼のトレーニングを取り入れたワレリ ボルゾフ(Valeri Borzov)が1972年のミュンヘンオリンピックで100mの金メダルを取り、ヴェルホシャンスキーの論理を証明しました。
そして1975年にアメリカの元オリンピックの長距離ランナーのフレッド ウィルト(Fred Wilt)が、ロシアの選手が競技前にジャンプをしてウオームアップしているのをみて、「プライオメトリック」という言葉を考えたとされています。
この時代、静的ストレッチが主流で、アメリカの選手もゆっくりとストレッチをしているのに対し、ロシアの選手はジャンプをしているのをみて思いついたと言っています。
後にフレッド ウィルトは、ロシアが陸上で強かったのは、このジャンプが一つの理由だと確信した、と言っています。
その後、1980年代になって、フレッド ウィルトは、マイケル イエシス(Michael Yesis)と一緒に仕事をすることによってプライオメトリックスの論理がアメリカで浸透してきました。
マイケル イエシスはアメリカ生まれで、南カリフォルニア大学(University of Southern California)で博士号を取った後、1982年に当時のソビエトに渡りユリー ヴェルホシャンスキー博士からトレーニングの論理「ショックメゾット」を学び、アメリカに戻ってきてからフレッド ウィルトと「プライオメトリックス」として論理を広めていきました。
プライオメトリックスの論理
例えば、デプスジャンプ(以下のYoutTubeをご覧ください)を行う場合、ある高さから着地した時に、臀部、膝、そして足首の筋肉が伸張性収縮(エキセントリック)になります。筋が伸張します。
そして、着地した時に下向きに向かっている力が止まる時、この時が等尺性収縮(アイソメトリック)です。下向きの力が止まり、上に向かうその前の瞬間です。
そして、次にできるだけ速やかに短縮性収縮(コンセントリック)を行い上に飛び上がります。
このような伸張-短縮サイクルを反復することによって行う、筋力トレーニングをプライオメトリックス トレーニングといいます。
(上記ビデオは、みやチューブさんのビデオですが、プライオメトリックスのことが説明欄に明記されているのでこのビデオを選びました)
デプスジャンプの方法と注意点
デプスジャンプをする時には、地面よりが高いところに立ちます。高さは約50cmから80cm位でいいと思います。
そして、地面に対して垂直に落ちていきます。地面は滑らないような素材のところが良いです。
身体が落ちていく時に、意識的に筋肉を着地の衝撃に備えるように緊張させます。
着地したら、膝を曲げて衝撃を吸収します。上記のようにこの時は伸張性収縮(エキセントリック)です。
着地した瞬間は、身体に衝撃がありますが、伸張性収縮によって、身体が崩れ落ちるのを防ぎます。
そして筋力が十分に衝撃を吸収できたのであれば、下向きの力がなくなり、等尺性収縮(アイソメトリック)になります。
そして、伸張性収縮が、等尺性収縮の直後に短縮性収縮(コンセントリック)に変換され爆発的パワーになって上に飛び上がっていきます。
着地してから飛び上がるまでの時間は短いほどよく、通常この一連の流れで、飛び上がる動作を「瞬発力」といいますが、スポーツの分野では「爆発的パワー」といいます。
注意点
- 最初は、低いところから飛び降りるようにする。
- 体重と年齢を考慮して、強度と頻度を決める
- デプスジャンプをする行う前に、ある一定期間度筋トレをして、筋力と関節の力をつけておく
- トレーナーに見てもらい、正しいフォームか確認してもらう。
- 床が滑らないか確認する
私見とお勧め
私はトライアスリートとして、このトレーニングをランニング強化の一つに組み入れています。
ただ、IRONMANなどのロングのレースの為のトレーニング期間になると、週に12時間から14時間のトレーニングになるので、かなり脚が疲れてきていて、身体全体が慢性疲労の状態になります。
このような状態の時にデプスジャンプを行うと、なかなかの確率で怪我をします。
特に私の場合は、左のふくらはぎに負担がかかるようです。
それで、私がいつも通っているジムに、Total Gymという会社が作っているジャンプ トレーナー(Jump Trainer)というマシーンがあり、これを主に使用することにしています。

これは、傾斜があるベッドに背をつけて横になり、ジャンプをするというものです。ベッドとジャンプの土台になる下部にゴム(4本)でつながっており、ジャンプの時の抵抗になります。これを1本にしたり、2本、3本、もしくは4本で強度調整できるので素晴らしいマシーンです。
脚への負担は、このゴムの本数を変えて調整する方法か(4本が一番抵抗力がある)、もしくはベッドの傾斜を変更することによって調整します。
傾斜は緩くすると、脚への負担が弱くなります、また傾斜をきつくすると負担が大きくなります。このゴムの本数と傾斜の角度の組み合わせで負担を調整します。
例えば、ゴムの本数を4本にして傾斜をきつくすると、ゴムの引き戻し作用と重力でジャンプがきつくなり、また戻るときも着地の衝撃が大きくなります。逆に、ゴムの本数を少なくして、傾斜を緩くするとジャンプと着地が柔らかくなります。
効果はほぼデプスジャンプと一緒で、筋肉の収縮性運動と伸張性運動ができプライオメトリックスのトレーニングとしては最適です。
あとこのマシーンの良い点は、背をつけていることで、脊柱がサポートされているので腰への負担が少ないのがかなりポイントが高いですね。また、なにより膝への負担が軽減されるので、その日の体調によってマシーンの強度を変更できるので、素晴らしいマシーンでかなり重宝しています。
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