約一年前に発表された論文が、また脚光を浴びているようです。その経過が面白く、まずその論文をかの有名なMC Hammerがツイートし、そしてアメフトのJJ Watt(J.J.ワット – ヒューストン テキサン)がツイートして注目を浴びるようになったとのこと。
そして、その論文の内容がインターバルトレーニング中の休み方についてだったのでマラソン界でも話題になり、その要約がPodiumRunnerに掲載されていたので紹介します。

問題点
上半身のポジションによってリカバリーがどう違うかということについての考察。以前の研究では、最良のリカバリー方法は横になること。しかし、実際のインターバルトレーニングの最中に横になるのは実践的ではないので、2つのポジションについて調べることにしたようです。
一つ目は背筋を伸ばして両手を頭部のうしろで組む方法。もう一つは、背骨を約10パーセントほど曲げて、両手を膝において休む方法。膝に両手をついている時には腕はまっすぐに伸ばすように指示。
被験者
大学女子サッカーチームで、インターバルトレーニングに慣れている20名が被験者。平均年齢は20歳、そして平均BMIは22.4。BMIが22を適正体重としているので、かなり健康的な被験者群といえます。
実験
被験者は無作為にトレッドミルでの2種類のインターバルトレーニングに分けられます。
この2組のトレーニング方法は同じで、4分 x 4本でその間に3分のリカバリー。違いは、リカバリー時に頭部で手を組む(頭)か、膝に手を置く(膝)かの違い。
そして、走る速度は、個人の最高心拍の90~95%を維持するとのこと。(結構きついですね)
各インターバルの直後に、被験者は分けられたグループでのポジション(「頭」か「膝」)を維持したまま、メタボリック カートと呼ばれる呼吸機能を測定する記録システムに、息を吹き込み肺への酸素供給量と同時に心拍の変化を調べます。
心拍は、最初の60秒でどれだけ心拍が下がるかを観察します。
結果
この2グループの最初の60秒の心拍の下がり方には大きな違いがありました。
頭部に手を組んで休むグループでは、心拍が31ビート下がったのに対し、膝に手をおいて休んだグループは53ビートも下がったとのこと。統計的には有意な差です。
肺への酸素供給に関しても、膝に手を置いて休んだグループのほうがリカバリーが早かったとのこと。
これはどういうことかというと、呼吸をするときに重要な横隔膜の可動範囲に関係があるようです。
この範囲のことをZone of Apposition (ZOA:ゾーン オブ アポジション)といいます。これは呼吸時、息を吐くときは横隔膜は上に上がり、肋骨下部内でドーム状になっています。そして、息を吸うときには、横隔膜が下がり平らな形になっていきます。
ですので、ZOAとは、このドーム状のアーチの頂上から、平になる下の部分までの容積のことです。そして容積が大きいほど、呼吸時に酸素を取り込みやすく、二酸化炭素を排出しやすいので、数値が大きいほどリカバリーに効果があるといえます。
そして、このZOA値は手を膝に置いた上半身のポジションが、頭部に手を組むよりも高かったという結果になっています。
まとめ
リカバリーはトレーニングにおいて非常に重要なことは周知のとおりですが、インターバルトレーニングなどで息が非常に上がった状態で、如何に短い時間で呼吸・心拍を戻すかというのも大切なことです。
この研究では、どのような上半身のポジションが短期的なリカバリーに効果があるのかというのを調べたもので、頭部で手を組むというグループと膝に手を置くという2グループで比較した結果、後者のグループがリカバリーが早かったとの結果になりました。
これにはZOAという横隔膜が動く範囲が関わっており、膝に手をおく上半身が曲がった状態のほうが、直立の状態よりも数値が高かったというのが理由と結論付けられています。
私の昔の部活時代の記憶によると、休む時は腕を上に上げたほうが、肺のキャパシティーが大きくなるから、手を挙げて呼吸をするようにと言われたような気もしますが、実際は手を上げたほうが横隔膜の動き幅が制約がかかるようです。
また、膝に手をついた状態は腰に負担をかけるからやめたほうがよいと、いうことも聞いたこともありますが、その点については後日機会のある時に調べてみたいと思います。
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