和魂洋才

ニューヨークタイムズの記事「運動は免疫を強くするか?」

トレーニング
https://www.nytimes.com/2022/09/07/well/move/exercise-immunity-covid.html

この数年のパンデミックで、多くの人々が免疫の重要性を学んできたのではないでしょうか? 身体を動かしたり運動すると、風邪やインフルエンザにかかりにくくなるということは以前から伝えられてきましたが、最近までそのことを裏付けるデータはあまりなかったようです。

9月9日のNew York Timesで、このコロナ禍での運動しているグループとしていないグループの研究の結果を踏まえ免疫のことについての記事がありましたので、ちょっと紹介します。

https://www.nytimes.com/2022/09/07/well/move/exercise-immunity-covid.html

論文

このニューヨークタイムズの記事は、8月にBritish Journal of Sports Medicineから発表された研究論文を基にしており、以下のリンクから見ることができます。

Physical activity and risk of infection, severity and mortality of COVID-19: a systematic review and non-linear dose–response meta-analysis of data from 1 853 610 adults
Objective To quantify the association between physical activity and risk of SARS-CoV-2 infection, COVID-19-associated ho...

論文のタイトルは「運動とCOVID-19の感染、重症化、そして死亡のリスク」(Physical activity and risk of infection, severity and mortality of COVID-19)で、2019年11月から2022年3月までに発表された16の論文、被験者総数185万3610人のメタアナリシスによる論文になります。

メタアナリシスとは、複数の研究結果を統合し、統計解析を行う方法のことで、Evidence Based Medicine(根拠に基づく医療)において最も質の高い根拠とされています。

運動と感染・重症度リスクの関係

この論文の中で、パンデミック中に運動を続けた人々のデータをみると、運動はCOVID-19感染リスクの低下と重症化の低下に関係していることがわかりました。この分析から、運動を中心とした身体活動と健康管理方法のガイドラインにつながるのではと結論付けています。

この数十年の間、健康で運動を定期的にしている人は、気道感染症の発生率が低いことが報告されてきました。アパラチア州立大学の健康・運動科学の教授である、デービッド ニーマン教授は、運動する人が病気になると、重症度が低くなる傾向があるといっています。「一般的な風邪、インフルエンザ、肺炎による重篤な転機と死亡のリスクは、かなり低下している」と述べています。

今回発表された論文では、この影響はCOVID-19にまで及ぶことがわかりました。世界中の被験者から定期的に運動している人は、運動していない人と比較して、入院のリスクが36%低く、COVID-19による死亡のリスクが43%低く、さらにCOVID-19に感染する可能性自体が低くなったとのことでした。

週に75分から150分で、運動している人が一番効果があったとのことでした。ただ、それ以上でもそれ以下でも、まったく運動していない人よりも病気になる確率が低かったようでうす。

例えば、定期的な運動は、肥満、糖尿病や心臓病などを減らすのに役立つことが知られています。これらの病気は、重度のインフルエンザやCOVID-19のの危険因子です。これらの病気がない人は、重症化しにくいことが分かっています。

基本的に運動は、安らかな睡眠をとりやすく、気分を高め、インスリン代謝と心血管の健康を改善するので、インフルエンザやCOVID-19などの感染にかかりにくくなります。ただ論文では、これらの利点が免疫システムの直接的な変化によるものか、もしくはただ全体的な健康状態の改善によるものなのかを知るのは難しいとしています。

運動中の免疫機能の働き

この論文で、ある研究グループは、運動をすることによって血液中の免疫細胞の循環を増加させることにより、感染性細菌やウイルスを撃退するのに役立つ可能性があると理論付けています。小規模な研究では、筋肉の収縮と動きがサイトカインとして知られるシグナル伝達タンパク質を放出し、免疫細胞が感染を発見して撃退するのを助けていることも発見しました.

運動を終えてから 2 ~ 3 時間後にサイトカインと免疫細胞のレベルが低下したとしても、毎日運動を続けていることにより、免疫システムがより反応しやすくなり、病原体をより速くキャッチできるようになるとのこと。要は、運動することにより、免疫システムが体制万全で、常に戦闘状態になっているということのようです。

また運動をして免疫反応が高い健康な人では、慢性的な炎症の軽減にも関連していることが報告されています。広範囲にわたる炎症は、自身の免疫細胞がを自分の体に対して反応することがあり、アレルギーのようにダメージを与える可能性があります。この広範囲にわたる炎症は、COVID-19の既知の危険因子ですので、運動により炎症が軽減することで、感染を撃退する可能性が高まることになると報告されています。

検証事項

上記の研究は、運動と免疫機能の向上を裏付ける内容ですが、慎重派もいます。

カリフォルニア大学サンフランシスコ校の感染症専門家のピーター チンホン博士は、運動と免疫機能の関係は認めるものの、特定のメカニズムには至らないとしています。

彼によると、人々は様々な方法で運動するので、運動全般を括って免疫に及ぼす精確な影響を研究するのは困難で、簡単にその相関関係を測定できないと指摘しています。

一つの指摘としては、この論文で取り上げられている多くの研究の被験者は、運動の量と強度を自己申告していますが、これはしばしば不正確になる可能性があるとのこと。また、運動が有益であると期待するだけでも、強力なプラシーボ効果があるので、免疫機能にとって理想的な運動量やそれらの種類を正確に判断するのは困難と異を唱えています。

また、アリゾナ大学の運動生理学を研究しているリチャード シンプソン氏は、運動の免疫機能に与える効果は認めつつも、運動のしすぎでで感染症や病気にかかりやすくなることもあると指摘しています。

例えば、マラソンランナーは、レース後に気分が悪くなることがよくあり、一部の研究者は、激しい運動をしすぎると体内のサイトカインや炎症を過剰に刺激する可能性があるといっています。また、運動前の健康状態にもよりますが、休憩なしで運動すると、体のグリコーゲンが枯渇し、それにより免疫機能が数時間または数日間損なわれる可能性があると指摘しています

またある研究者は、論文で運動を続けている人は、自分の健康に注意を払っているので風邪やインフルエンザにかかりにくいだけ、と結論付けている論文もあったようです。

結論

これらの16の論文からのメタアナリシスから、平均的に運動をしている人は、免疫機能が働いており重篤な病気になりにくいという結論が多くみられたようです。ただ、色々な考察を今後もしていき、運動と免疫機能の関係を明らかにしていく必要があるとしています。

十分な運動をするのが健康上できない人や、何らかの理由で運動できない人には、人々の健康を維持するには様々な要因が複雑にかかわっているので、気を落とさずにできる限り体を動かさすようにしてくださいと締めくくっています。

私見

多くの人がそうだと思いますが、トレーニングを継続的に行っていると風邪をひきにくいのは経験されているのではないでしょうか?

少なくとも、私個人は風邪をほとんどひかないですし、引いても鼻風邪くらいで数日で治ります。ただ、この論文でも指摘されている通り、トレーニングのしすぎは免疫が下がっているように感じることがあります。

やはり運動は、体が酸化し炎症を起こしている箇所が多いので、体内に潜伏しているウィルスに対応できないということもあるかもしれません。

そういった意味でも、トレーニング後のケアは大切ということなのですね。自分の体の「声」を聴き、必要としていることを見抜き、体のリズムを整えていくというのは重要なのではと再認識しました。

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