こちらサンディエゴでもレストランなどが再開を始め、日常の生活が少しづつ戻りそうな気配があります。そして、マスク着用やソーシャルディスタンスなどの励行は常識となりつつあります。
しかし、ランナーでマスクやフェイスマスクをして走っている人はあまり見かけません。サンディエゴは海岸沿いなどを含め、ある程度距離を保てるので問題ないようですが、ニューヨーク(マンハッタン)などの密集地帯ではそうでもないようで、The New York Times(ニューヨークタイムス 5月30日)で「ランナーはマスクを付ける必要があるのか?」(Do Runners Need to Wear Masks?)という記事がありました。

ランナーはマスクを着用しなくてはいけない?
ニューヨーク市内などで、マスクを付けずに走っている人が、「マスクをつけろ!」と怒鳴られている風景がよくあるようですが、ランナーはマスクを付けるというルールはあるのでしょうか?
市や州の自治体はマスク着用を義務付けていますが、外で走っている時の明確なルールはないようです。周りに誰もいない状態であれば付ける必要はないとしています。
例えば、先週にロスアンジェルスでは、家から出る時はマスクやフェースカバーを付ける必要があるけれど、走るときやバイクに乗るときにはソーシャルディスタンスを保てるのであれば着用する必要はないと発表しています。
アメリカ疾病予防管理センター(CDC)も同じで、ソーシャルディスタンスを保てればマスクの必要は無しとしており、特にランやバイクに関しての運動分野での規定は定められていません。
マスクを付ける科学的な根拠は?
今のところ、運動する時にマスクを付ける必要性の科学的根拠はないようです。もっとも、これはこの分野でのリサーチの数が少ないのが主な理由ですが、いまのところ行政からの規定はありません。
メリーランド大学の環境科学のミルトン教授によると、マスクは飛沫防止という意味では重要だが、それは場所によると言っています。密集していないアウトドアではある程度安全で、やはり必要なのは密集地帯での運動や、他人が近くにいるインドアーでは重要であるといっています。
ランナーやサイクリストはどのように他人に感染させるのか?
イギリスのレスター大学のウイルス学のジュリアン タン教授によると、速い速度で抜かれた場合に抜かれた人が感染する割合は非常に少ないとしています。それは、ランナーの周りの大量の空気が、排出されたウイルスの密集を分散させ、風によって散らばるからといっています。
さらに、アウトドアの空気の循環はコロナウイルスの感染を弱めるとしています。

また、中国での研究によると7300人の感染者の中で一人だけが外で感染したとの報告もあるようです。
https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.04.04.20053058v1.full.pdfしかし呼吸の激しいランナーは飛沫防止のためにマスクはやはり必要か?
この4月にベルギーとオランダの技術者が発表した、ランナーとサイクリストによる飛沫距離はソーシャルディスタンスの基準とされている2mよりも遠くに飛ぶ可能性があり、ランナーで約10m、そしてサイクリストで20mの距離を保つのが理想と発表しました。(上記アイキャッチ画像)

これはかなりSNSなどで拡散され、それを受けて技術者達はすぐに追加の発表をしました。これは工学的な風向のモデルによるもので、静止状態の飛沫範囲と動的状態の範囲の違いを示しているだけで、実際のウイルスの拡散とは違うということのようです。
ウイルスの飛沫は様々な要因が考慮されるので実際にどのように走っている時に拡散されるかを見極めるのは難しいとされていますが、一つ言えるのは、走っている人のすぐ後ろに長く間ついていくのは止めたほうがよいと言えます。
汗は?
アメリカ疾病予防管理センターによると、汗からの感染はないとのことです。
唾は?
唾からは感染する可能性があるので危険とされています。
ランナーやサイクリストはどのように安全を確保すべきか?
人気のあるコースや時間帯を避けるべきというのが一番のようです。そして、マスクを一応持っていき、もし他人との距離を保てない場合や、ある一定の時間他人といる場合(並走)はマスクを付けるのがよいとのことです。
これらは常識的な範囲ですし、またマスクの付け外しは慣れてくるように思います。バイクの場合は、マスクを付けたり外したりというのは無理ですし、逆に危険ですのでフェイスマスクなどを首にかけておき、必要な時は口をカバーするというのがよいのかもしれません。
アメリカの陸上競技では、4Dというのがあるようで、それはDouble Distanceと Don’t Draftの4つのDの頭文字からの規定のようです。Double Distanceは「距離を2倍」ということなので、例えば4mを保つようにするということのようです。Don’t Draftはドラフト(後ろについて走行)しないということですね。
マスクはトレーニングに有効か?
マスクは高地トレーニングの状態になるという人もいますが、これは正確ではなく、マスクはトレーニングには有効ではないとのこと。
まとめ
ランニングやバイクなどのトレーニングではマスクの着用義務がないとのことですが、一応携帯をしておいて、他のランナーやサイクリストとソーシャルディスタンスを保てない場合は着用するのが安全とのことです。
マスクは飛沫防止には有効と科学的に証明をされていますので、やはり携帯しておくのは必要と思います。また、外でのトレーニングの場合はインドアーよりも感染リスクが低いとのことですので、あまり外でのランやバイクは心配はないようです。
必要なのはやはり常識をもって、出来るだけソーシャルディスタンスをとるように心がけ、あとはエチケットも大事で、例えば誰かと走る場合は、大声で話さないとか、抜く時は一声かけるとか、そのような他人を気遣うことは大切かと思います。
行政が基にしている科学的根拠を調べ、あとは常識的に行動すればよいように思います。ですので、マスクをしないでアウトドアでトレーニングしている人達に怒鳴ると言うのは無意味のように思います。
ある研究によりますと、多くの人は他人のアドバイスよりも身内からの忠告に従うようなので、トレーニングしている他人に怒鳴って注意してもお互いに気分を害すだけのようです。
神経質になるのは解りますが、このような状態の社会ではすこしでもお互いが気持ちよく生活できるように心がけたいものです。
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