アメリカのトライアスロンの団体、USA Triathlon(USAT)が、国が管理するスポーツ団体で初めてCBD(カンナビジオール)を販売する会社とスポンサー契約しました。

CBDとは大麻植物から生成された化合物のことです。
大麻(英名カンナビス)は日本では、麻薬特例法においては規制薬物と規定されており、所持は大麻取締法による規制を受けます。
アメリカでは大麻の合法化が進んでいます。私の住んでいるカリフォルニア州でも2018年の1月より嗜好・娯楽目的の大麻の売買や所持、また栽培が合法化されました。
そういった中で、USATがCBDを製造・販売する会社とスポンサー契約するというのは自然な流れのように思います。
今回は、CBDを含め大麻植物の化合物の効果・効能や、それがアスリートにどのように影響を与えるのかを見ていきたいと思います。
大麻とは
大麻はアサの花弁や葉を乾燥または樹脂化させたもの。最近では液体化させたものをあるらしいです。
このアサにはカンナビノイドとよばれる化合物が含まれており、その数は約60種類といわれています。
この化合物には薬理作用があるものもあり、それが規制薬物として取り締まられている理由です。
その代表的な化合物がテトラカンナビノール(THC)。これが俗にいう「ハイ」になるという化合物で、精神活性成分となります。
逆にCBDは非精神活性化合物で、精神への影響はないとされています。CBDの主な効果は強い抗炎症効果です。多くの病気は炎症に関与しているため、その炎症を減らすことで病気を治療することができます。
またアスリートにしてみれば、トレーニングによる炎症を抑えたり、鎮痛効果があります。
THCとCDBの違い

医療や健康用途のために使用する人はCBDに重点を置く傾向があり、娯楽目的での消費者はTHCを好む傾向があります。
THCは陶酔感や感覚が敏感になり、心身共にリラックスして心地の良い状態になります。
THCの量や環境によって、不安やパラノイアに陥ることがありますが、1時間、もしくは長くても数時間でその効用がなくなってくるので大丈夫です。
その点、CBDはこのような精神的な影響はもたらさず、よって感情的にも穏やかに過ごせます。
この向精神的な効果があるかないかというのは非常に重要な点で、それによって選ぶカンナビノイドが変わってきます。
特にTHCが規制されている国で使用すると犯罪になるので注意が必要です。
THCとCBDの共通点
それでは、共通点はなんでしょうか。
これらの2つのカンナビノイドは身体への治癒効果を与え、共通の治癒効果というのは、抗炎症効果です。
ただ、先に書きましたがTHCは向精神性がありますので、その効用を必要とせずカンナビノイドの治癒効果を享受したいのであれば、CBDを選ぶべきです。
例えば、子供の治療で使用する場合は、CBDが主になります。
てんかんを持つ子供に対してCBDを使ったデータがあります。

これはピアーレビューされた科学的論文ではないですが、コロラドの小児科の病院でのデータです。
75人のてんかんを患っている子供にCBDを使用したところ3人に1人がてんかんの症状が良くなったという結果があります。
また、生活の質(QOL)が向上したという報告もあるようなので、CBDは一定の効果があるといえます。
また、てんかん患者にCBDやTHCを使用するか否かというアンケートを155人の医者を対象に行った研究があります。

2018年の論文ですが、45%(69/155)の医者がCBDを使用しているとのことです。
彼らの主な目的は治療というよりも生活の質(QOL)の向上を目的にして使用している医者が多いようです。
しかし、CBDを使用する医者は多くなってきていますが、CBDを使用した治療を如何に行うかとう見方に関しては様々な意見が分かれたそうです。その理由として、やはりまだカンナビノイドが違法薬物としての認識があり、患者の反応などを考慮すると躊躇する人もいるとのことがあるようです。
次に医療としてのカンナビノイド(THCとCBD)を見ていきましょう。
医療用としてのカンナビノイド
THC
THCは、CBDと同様に抗炎症性を有します。
またTHCは痛みの治療に多く使用されてます。THCの受容体は脳に集中しているため、痛みをブロックすると言われていますが、この他にも重症疾患に伴う複雑な症状の多くを治療するのに役立ちます。
THCと吐き気の症状
例えば、THCは化学療法治療に伴う吐き気および嘔吐を低減することができす。2011年に発表された論文によると化学療法による吐き気などの症状は、THCを含むカンナビノイドによって抑えることができると言われています。

2005年の論文によると、化学療法を行っている患者の約20%は吐き気や嘔吐が問題でその治療を止めるというデータがあります。特にここでは吐き気のほうが嘔吐よりもつらいとされています。それは、吐き気のほうは継続的な症状だからで、これは非常に化学療法を行うにあたり障害になっていると書かれています。

もっとも、吐き気を抑える薬もあり、ほとんどの患者はその薬により楽になるようですが、もしTHCが吐き気や嘔吐の症状を抑えることができるのであれば、薬をできるだけ抑えたいと思う患者には朗報です。
THCと食欲増進
また、病気や病気によって体重が減少している人々の食欲を刺激することもできるという報告もあります。

これは2014年に発表された論文ですが、マリファナ(THC)は食欲の増進に役立つので、体重が減少している患者には有効との結果がでています。ただ、これは体重が平均よりも低い体重の人に効果があり、平均がそれ以上の体重の人には有意な結果はでなかったとのことです。
また、HIV患者で体重が減少している患者に対しても、効果があるとの報告がありました。

これは2012年の研究で、HIVの男性患者に特定した論文ですが、THCの摂取後に血中の食欲のホルモンが増加したとの報告があります。
THCと認知症
さらに面白いのは、認知症の症状です。
実際、アルツハイマー患者に関する最近の研究では、カンナビノイドが認知症の治療に役立つ可能性があると言われています。

これは2014年に発表された論文ですが、少量のTHCはミトコンドリアを活性化させアルツハイマー病に効果があるとしています。
これはアルツハイマー病患者の脳では、ミトコンドリア機能が低下するために活性酸素の生成が亢進しています。そしてこの活性酸素が、ミトコンドリア機能に障害を生む悪循環になっており、それが神経変性の原因と考えられているということです。
ミトコンドリア機能を維持することでアルツハイマー病の症状や神経変性が改善される可能性があるとの見方を示しています。
また、以下の2016年の研究では、THCはアルツハイマー病の治療に安全で有効な治療法と発表しています。

さらに次の2018年の発表では、マリファナ(THC)はアルツハイマー病に関連する脳内の毒性のあるタンパク質(アミロイドβタンパク質)を除去するということも言われています。

THCとストレス・不安
THCは病気に関連する精神的な治療にも役立つことが明らかになっています。特に、2018年の以下の発表ではストレスにはTHCが役立つと言われています。

ただ、多くのTHCの使用は不安を生むという研究もあります。これはCBDも同じ効果があるとの報告です。
次に、CBDを見ていってみましょう。
CBD
2017年の世界保健機関(WHO)の報告では、このカンナビノイドは健康への悪影響はなく、カンナビジオール(別名CBD)のいくつかの医療用途を評価しています。
自然由来のCBDは安全であり、人間(および動物)でも許容度が高く、公衆衛生への悪影響はないと言い切っています。
さらに専門家は、大麻に含まれる非精神活性化学物質であるCBDは身体的依存を誘発せず、「中毒の可能性はない」と明言しています。
これはどういうことでしょうか?2つの側面から見ていきたいと思います。一つは非精神活性科学物質、もう一つは身体での機能です。
非精神活性科学物質
WHOは、CBDがてんかんの有効な治療法として実証されている」こと、およびCBDがアルツハイマー病、癌、精神病、パーキンソン病の治療に役立つ可能性があるという「予備的証拠」があると判断しました。
https://www.who.int/medicines/access/controlled-substances/5.2_CBD.pdf
さらに報告書に「いくつかの国は、医薬品としてのCBDに対応するために国の規制を変更した」とあります。しかし、米国も日本も規制変更の機運はありません。
米国では、大麻成分として、CBDは引き続きSchedule I規制物質として分類されています。つまり、連邦政府の見解では「中毒性の可能性が高い」ということです。要は、精神活性としての分類と同じで依存性があるとの見方を示しています。
しかし、CBDは精神活性させる化合物はありません。もっとも、業界の専門家が忠告しているように、すべての大麻抽出物が同等に、そして純粋に、または同じ抽出方法で作成されるわけではないので、万が一の可能性でTHC成分が混ざっている可能性もあるといわれています。
しかし、基本的にはCBDは精神活性科学物質は含まれておらず、今回のUSATが認可してCBDの会社も第三者機関でその純粋性を検査しているので、そのようなCBDを使用すれば上記の治療に役立つことは可能とのことです。
身体での機能
抗炎症効果
CBDは体に強い抗炎症効果をもたらすので、健康上非常に良い作用をします。

CBDは体内のエンドカンナビノイド受容体(CB2)に結合して、アナンダミドと呼ばれる神経伝達物質を分解する酵素の産生を阻害します。アナンダミドの目的は、痛みの受容体をブロックすることで、アナンダミドが多いほど、痛みが少なくなります。
またCB2受容体は、脾臓に多く集中しています。脾臓は古い血液細胞の浄化処理をして、体の免疫力を高めます。脾臓はまた、抗炎症反応を引き起こす働きがありますので、 CBDの影響でこの反応がさらに大きくなることが予想されます。
多くの病気は炎症に関与しているため、その炎症を減らすことで病気を予防・治療することができます。
身体調節機能
このカンナビノイド受容体(CB1とCB2)の働きのことを、エンド カンナビノイド システム(ECS)といい、要は独自の体内調節を担っています。
このECSは、神経系、免疫系、消化器系、内分泌系などの他のシステムの調節を助け、身体のさまざまな反応に影響を及ぼします。
しかし、加齢やストレス、生活習慣でECSのはたらきが弱くなると『カンナビノイド欠乏症』となり、身体各部で不調をきたします。これが病気、もしくはその前兆です。
このカンナビノイド受容体(CB2)に結合するCBDを摂ることでECSのはたらきを取り戻すことができます。身体の調節機能を元にもどし、CBDは、冒頭で紹介したさまざまな疾患を“直接治す”ものではありませんが、細胞間の働きを円滑にすることで、体内の恒常性を一定に保つようはたらきかけるというわけです。
CBDは、体に落ち着きある効果をもたらすことで炎症を軽減し、痛み受容体をブロックすることで、痛みを治療するのに役立ちます。さらに身体機能を調節することで体内の健康を保つことができるとされています。
CBDとアスリート

CBDが心身をリラックスさせ、炎症効果を抑える働きがあるので、アスリートにもその効果が十分あります。
トライアスロンのような持久力のレースを行っているアスリートにとって、CBDオイルの使用は、持久力スポーツのパフォーマンスや回復に効果があると言われています。
不安の解消
多くのトライアスリートにとって、レース当日の不安を軽減することができます。特にレースの水泳の部分では、緊張するのは仕方ないですが、できるだけリラックスすることが必要です。
この不安解消には、多くのアスリートはストレッチや深呼吸などをしていますが、CBDオイルはこの解消に一役かうことがあるとしています。
さらに、CBDは睡眠に役立ちます。睡眠は間違いなく持久力トレーニングとレースに必要です。もしレース前夜に睡眠に苦労する傾向があるのであれば、より規則的な睡眠パターンに入り、適切な休息を得るために、CBDを(他のオプションと一緒に)検討することも一つの方法です。
精神的な鋭敏さ
CBDにはレース中の集中力を維持する効果があります。
高強度の運動やトレーニングは、身体に酸化的損傷を与えます。身体の酸化は、認知症や脳疾患を引き起こす可能性があり、上述したようにCBDはそれらの酸化を抑える作用があります。
どんなにトレーニングを積んでも、脳が疲れ認識が弱くなるとレース中に潜在的なパフォーマンスが大幅に低下する可能性があります。
同じレベルのアスリートの場合、最後は精神的なものが勝敗を決めると言います。CBDで身体と脳をしっかりと休めることにより、精神的な鋭敏さと集中を養いレースに臨めれば良いかもしれません。
筋肉と関節の痛み
CBDは炎症を抑え、身体を健康な状態に保つことができます。
トレーニングを毎日行っている人は、どこかしら故障があったり、痛みと共に生活している人は多いと思います。
これまでは痛み止めは、鎮痛薬(オピオイド)やNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)が主流でした。しかし、NSAIDsは腸内環境を破壊し、時間の経過とともに、冠動脈の問題のリスクを高めることさえあります。一方で鎮痛薬は、中毒性があることで有名です。
CBDは、痛みを軽減しようとするアスリートにとって、はるかに安全な代替手段です。
抗炎症効果
CBDは、多くのアスリートが経験する関節の炎症などの抗炎症効果があります。
炎症の治療薬はありますが、長期的な身体への影響や特にアメリカでの医療費の高騰を考慮するとCBDはの恩恵とメリットは高いと思います。
長くアスリートとしてレースに参加したい人にとって、CBDオイルは健康を維持するための有望で潜在的に不可欠な治療法といえます。
まとめ

今回はアメリカのトライアスロンの団体(USAT)がCBDを販売する会社とスポンサー契約をしたということで、CBDを始め大麻に関する情報を纏めてみました。
特に今回は大麻(THCとCBD)の効果に焦点を当てて、信頼できる科学的研究の文献から検証していきました。
THCとCBDの共通点・違いを見ていきましたが、共通点は抗炎症効果などを含む医療目的ということ。違いはTHCは精神活性物質が含まれていて、陶酔・多幸感、いわゆる「ハイ」といわれる感覚を心身に生じさせます。
しかし、CBDにはこの精神活性物質が含まれてはいないが、身体をリラックスさせる効果があり、体内の調節機能を正常に働かせるという点が注目するべきだと思います。
今後このCBDがアスリート、特にトライアスリートの間でどのように使用され効果が報告されうのか注目していきたいと思います。
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