和魂洋才

ポール グリリーによる陰ヨガの説明

陰ヨガ

インド古来から脈々と受け継がれてきているヨガは、この時代において非常に脚光を浴びてきています。

色々なヨガのスタイルがありますが、今日は陰ヨガについて書きたいと思います。

ヨガはアーサナと呼ばれる様々なポーズを一定の時間を行います。陰ヨガもアーサナを行いますが、他のヨガと違うのは、通常よりも長い時間を保つということです。最低2分くらい、長くて5分、アーサナによってはそれ以上ということもあります。

その陰ヨガについて、サラ パワーズ(Sara Powers)とならんで、陰ヨガの創始者と言われている、ポール グリリー(Paul Grilley)が、ヨガジャーナル(Yoga Journal)に寄稿しているのでその記事をご紹介したいと思います。

陰ヨガとは何か、何が特徴で、他のヨガとどう違うのか。また、結合組織とは何か、また関節のストレッチとはどういうことなのか、危険ではないのか、など陰ヨガの本質をお伝えしたいと思います。

ヨガと瞑想

長時間座っていたり、瞑想をして座法を組んでいる時、膝がキリキリしてきたり、背中に痛みを感じたり、またお尻が痛くなるという経験をしたことのある人が多いと思います。

ヨガを練習していることで体は柔軟で丈夫なはずなのに、肉体の苦痛のせいで長時間瞑想できないと嘆くこともあるかもしれません。

陰ヨガはそのような人達にお勧めしたいヨガです

ポールが瞑想を始めたときには、彼は既にダオイスト ヨガを学んでおり、なぜ長い間座るのが苦痛なのかということを少し理解し始めていました。

ダオイスト ヨガは陰ヨガの元になったと言ってもよいくらい、ポールには影響のあるヨガのシステムです。彼が、ダオイスト ヨガから学んだことは、ちょっとしたヨガへの工夫を施すことによって、楽に肉体的苦痛を感じずに瞑想できるようになったということです。

東洋のエネルギー理論

古代の霊的賢者は、永く深い瞑想から身体にエネルギーが流れていることを観つけました。

インドではそれはプラーナ(Prana)と呼ばれ、その流れるところがナディ(Nadis)と呼ばれました。

中国では、氣と呼ばれ、その通り道を経絡と名付けました。

太極拳や気功はこの氣の流れを調和するために発展し、インドではヨガとして受け継がれてきました。

西洋からの見方

西洋医学は、経絡やナディは身体の中に証拠として見つけられないので、この伝統的なエネルギー理論に対して懐疑心をもっています。

しかし、近代の研究者で日本の本山博博士やアメリカのジェームス オスマン博士(Dr.James Oschman)は、結合組織にエネルギーが流れているのではないかと研究をされてきました。

陰と陽

ダオイスト ヨガは、中国の何千年の歴史をもつ経絡理論とインドのヨガの叡智が融合して産まれたものです。

これには陰と陽についての話をしなくてはいけません。

陰とはじっとして動かない、物の隠れた部分のもので、陽は変化し、動き続け、物の現れている部分です。

冷と温、上と下、興奮と落ち着き、などがその例です。

陰と陽は相対的なもので、絶対的なものではありません。比べるものの本質によって、陰か陽かが変わります。絶対に陰、絶対に陽、というものはないということです。

例えば、月をみて「あれは陰だ」と言い切ることは出来ません。確かに、太陽と比べれば、月は陰です。しかし、地球と比べたときには、(少なくとも私達の見地からは)月は明るく、高く、そして動いているように見えるので、陽になります。

もう一つ例を見てみましょう。心臓と肋骨を比べます。

本質で比べれば、心臓が陽で肋骨が陰です。心臓は柔らかく、動きがあり、そして弾力があるからです。しかし、場所で比べれば、心臓は肋骨に比べれば陰です。心臓は内側にあるからです。

ヨガでの陰陽

このようにヨガも陰と陽とで見方が変わります。特徴的な見方では、組織(筋や骨)の弾力性です。

陽の組織である筋肉は、水分を含んでおり、柔らかく、弾力性があります。

陰の組織である、骨、靭帯、健、結合組織は、渇いており、硬く、硬直しています。

ですので、拡大解釈すると筋肉組織に焦点を当てるヨガは陽で、結合組織に焦点をあてるのは陰といえます。

確かに、身体を動かすヨガでは、筋肉と骨、結合組織、全てにおいて運動するので明確な陰陽の区別はできないかもしれません。

しかし、道教的な見方をすると、西洋で親しまれているヨガは筋肉の収縮による動きに焦点を当てているので陽となります。

この陽のヨガは、近代のストレス過多な時代には非常に有用です。道教では、陽の動きは氣の停滞をほぐし、流れをよくしますし、身体と心を強くするので素晴らしいエクササイズといえます。

しかし、陰の側面をもつ瞑想で座るという動作には、陽の動きは助けにはなりません。座法は陰です。これは動かないからというだけでなく、結合組織の柔軟性によるものだからです。

陰ヨガの関節をストレッチするというのはどういうこと?

現代の運動理論からは、関節周りの結合組織をストレッチするというのは、奇妙なことと受け止められます。

通常、運動している時に気を付けて、と言われるのは関節を痛めないで、ということです。

それでは何故結合組織をストレッチするというのでしょうか。

それは、運動の基礎理論である、組織に負荷をかけると、身体はその組織を強化するように反応する、という考えに基づいています。

それでは、陽の組織である筋肉の負荷と、陰の組織である結合組織の負荷をみてみましょう。

大胸筋を鍛えようとベンチプレスをすると、筋組織に多大な負荷がかかり破壊され、筋組織はその修復によって強くなりそして組織が肥大していきます。これは筋トレです。

次に関節に優しく負担をかけると、結合組織が痛みますが、ベンチプレスによる筋組織の破壊とは比べものにはなりません。

ここでは筋肉の組織と結合組織は全く別のものということです。別というのは、別の方法で負荷をかける必要があるのです。

筋トレの場合は、リズムのある筋収縮が筋肉組織には効果的です。結合組織に影響を与えるのであれば、ゆっくり、優しくそして一定の負荷をかける必要があります。

結合組織にゆっくりと長く陰ヨガのポーズによって負荷をかけると、身体はそれに反応して組織は強くなっていきます。

陰ヨガがターゲットにする関節

陰ヨガは、故障し易い関節を強くするためのものではありません。例えば、陰ヨガでは膝を横に振るという陽的な動作のストレッチは行いません。

勿論、膝を曲げて行うポーズもありますが、無理な場合は他の代替ポーズが必ずあります。

基本的に陰ヨガは、鍛えられない、もしくは順応性のないと思われている、股関節や、骨盤、そして背骨下部の柔軟性をもたせることを目的としています。

他のヨガと陰ヨガはどう違うのか。

陽的アプローチのヨガと陰ヨガが違う点は2つあります。一つは、最低でも数分ポーズを保つということ。そして2つ目は関節周りの結合組織をストレッチすることです。

結合組織をストレッチするというのは、その周りの、もしくはその結合組織につながっている筋肉をリラックスする必要があります。もし、筋肉が緊張していると、結合組織はストレッチに必要な負荷を受け取ることができません。

また立ちのポーズでバランスを必要とするアーサナや、逆立ちなどのアーサナは陰ヨガでは行いません。

多くの陰ヨガのポーズは、ヨガのアーサナを基に行われます。ただ、通常のヨガのように筋肉の収縮ではなく、陰ヨガの目的は筋肉をリラックスさせることなので、少し一般のヨガで行われているアーサナとは違うポーズになることもあります。

ですので、この違いを明確にするために、陰ヨガのポーズは同じアーサナでも違う名前を付けています。

まとめ

ヨガは大きく2つに区別できます。陽的なアプローチのヨガと陰的なアプローチのヨガです。

前者は、柔軟な筋肉を駆使したヨガ。後者は結合組織や靭帯など柔軟性のあまりないものに働きかけるヨガということができます。これが陰ヨガです。

そして陰ヨガの大きな特徴として、数分以上ポーズを保持するということと、陰ヨガは、鍛えられない、もしくは順応性のないと思われている、股関節や、骨盤、そして背骨下部の柔軟性をもたせることを目的としています。

この記事でも説明されていましたが、絶対の陽や絶対の陰はありません。それらは相対的な関係で、全てがバランスの上で成り立っています。

ヨガも然りで、身体や精神を活性化する必要があるときは、陽のヨガを行い、逆に落ち着かせる必要がある場合は、陰ヨガを行えばよいと思います。

個々の生活の中でうまくバランスをとりその時に必要なヨガを行えば如何でしょうか。

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