ファルトレック ランニングってご存じですか?
友達と一緒に走りたいけれど、皆それぞれ速さが違うので、同じコースを走るのは難しいという経験はしたことはないですか?ファルトレックは、さまざまな速さや能力のランナーがグループで走ることができる、トレーニング方法です。
2023年の3月にRunner’s Worldに掲載されてた記事がありましたので、ここに紹介します。
Fartlek(スウェーデン語で「スピードプレー」の意味)は、スウェーデンのコーチ、ゴスタ・ホルマー(Gösta Holmér)によって、スピードと持久力を 1 回のセッションでトレーニングできる方法として考案されました。
今回の記事では、ファルトレックとは何か、他のスピード ワークアウトとの違い、トレーニングにファルトレックを取り入れる理由、そして実行方法について説明しています。
ファルトレクとは何か?
ファルトレクはスピードワークの一種です。速いランニングと、中程度ぺースのランニングのを交互に取り入れる継続的なランニングです。
ランニングのペースの組み合わせは、時間や距離で決めることができます。例えば、時間を使用する場合、より速いペースで 1 分間走り、次に遅いペースでで 3 分間走るという方法です。または、距離を使用する場合は、1kmを速く走り、その後 700mを楽に走る、といった方法です。
このように、トレーニングは、走者個人に決定権があるので、さまざまなペースと長さを組み合わせることができ、また詳細な計画を立てずに気分に合わせて出発することもできるトレーニング方法です。
色々なスピードで走ることを楽しみながら取り組むトレーニングなので、かなり自由なトレーニングのようです。
インターバル走のようにキッチリと距離やペース/時間を決めておく必要はないのです。
ファルトレクは他のスピードトレーニングとどう違うのか?
テンポ ランは「快適にハード」に感じられ、一定のペースで走るので、違うスピードを組み合わせるファルトレックとは異なります。
スピードの組み合わせということでは、インターバルに近いですが、大きな違いは、走るペースに設定がないということです。インターバル走は、目標レースペースによって速く走るスピードを決め、それと同じかわずかに長い回復時間を設定します。また回復にはゆっくりとしたジョギングや停止なども含まれます。
しかし、ファルトレクにはそういう設定はありません。ファルトレクでは、スピード区間とスロー区間の時間や距離を設定しますが、その設定はその時のコンディションや気分で決定するというかなり自由なトレーニング方法になります。
ファルトレクは楽しく走ることが目的なので、インターバル走のようにカッチリと決めて走る必要がないのです。
ファルトレクをトレーニングに組み込む必要があるのはなぜですか?
トレーニング始めに良い
ファルトレクは、速いランニングやより激しいランニングをトレーニングルーティンに取り入れる前に行う最適な方法です。
自分の身体のコンディションに合わせて、ファルトレクのトレーニングを組んでいけばよいので、新しいトレーニング プランの最初の数週間に特に役立ち、ランナーが目標のレースに近づくにつれて身体的および心理的により厳しいセッションを取り入れていく準備が出来るようになります。
レースに近いトレーニング方法
インターバルセッションは素晴らしいですが、マラソンレースが始まると、立ち止まって休むことができません。トイレ休憩や緊急の事態でない限り基本的に、レース中は走り続けます。また、レースが一貫して一定のペースで行われることはほとんどありません。登りや下りがあり、また混雑している箇所などはスピードを落とす必要があります。このように、ペースの変化に対応するのもレースには必要な技術で、対応がうまくできない場合は、目標に達成ができなかったり、もしくはレースに負けてしまうことがあります。
ファルトレクはペース変化の激しいレースにも対応できるようになり、実際のレースの感覚を養えます。完全に休むことはせず、レース中に経験する自然なペースの変化に合わせて体を訓練していくことができます。
コントロールを覚える
ファルトレクの大きな特徴は、その日の気分に合わせてセッションをより柔軟に行うことができるので、レース当日、いつプッシュしてよいのか、いつ力を緩めるべきなのかを自然に身体が覚えていってくれるという利点があります。ファルトレクは身体にペースのコントロールを覚えさせることのできるトレーニング方法と言えます。
楽しくトレーニングを行うことに重きをおく
ファルトレクは、楽しいトレーニング方法です。型どおりのトレーニング方法ではなく、自分の感覚を大切にして行うトレーニングです。ですので、トレイル、競技場、ビーチ、街中など様々な地形や起伏のあるルートを走り、GPS ウォッチの心拍やペースから解放されて走ることを心がけてください。自分の感覚を頼りに、スピードを調節して走っていくトレーニングです。
違った地形や起伏のあるルートを走ることで脚力が強くなるという利点もあります。
有酸素運動の集中
中距離以上のレースになってくると、段々と足に乳酸が溜まってきて失速の原因になります。ファルトレクは、「回復」中にランニングを続けることで、有酸素システムに重点を置き、乳酸を燃料源として上手に再利用できるように体に教えるのに役立ちます。
いうなれば、終盤に強い体を作り、またペースの変化に対応できる身体になるので、ラストスパート力を磨くことにもなります。
ファルトレクをトレーニングに組み込む方法
ファルトレクには正攻法がありません。 それがファルトレク の利点ですが、役立つガイドラインがいくつかあります。
走り続ける
ファルトレクトレーニングとインターバル トレーニングの主な違いは、上記に述べましたが、ファルトレクはランニングを継続するということです。もし、速く走る区間で息が上がってペースが落ちてくる場合は、おそらく頑張りすぎているので、リラックスして、スピードを調整してください。そして、緩く走る区間では「回復」に集中してください。
感覚を信じる
ファルトレクは、GPS や心拍数に頼るのではなく、感覚に基づいてトレーニングするのが最適です。 0 ~ 10 の段階でみてみると、「速い」セッションは7から9の段階で行い、「ゆっくり」セッションは4から6の段階で行ってください。大まかでいいので、自分の感覚を養うことが重要です。
急がないこと
データ重視のトレーニングをしているランナーは、ファルトレクのような自由なトレーニングは最初戸惑うかもしれません。もしくは、不快に感じるかもしれません。また、初めてファルトレクを始めるときは、最初から頑張りすぎてすぐに疲れてしまったり、スピードの緩急のトレーニングを間違ってしまうかもしれません。
しかし、ファルトレクは学習プロセスであるため、継続して続けることが重要です。大切なことは、自分の身体の感覚に素直になり、その感覚に沿ってトレーニングをしていくことが必要になります。
そのため、トレーニング日記をつけて何がうまくいき、何がうまくいかなかったかを書き留めて、時間をかけてアプローチを形にしていくのが良いかもしれません。
自分の環境を利用する
環境をセッションの一部にします。たとえば、丘の頂上まで力強く走った後は、次の街灯までゆっくりと走るという方法です。走るコースの環境を使用して、その日のセッションを組み立てていきます。オフロードや起伏のあるコースを走ることで、GPS ではなく自分の感覚に集中できるようになります。
目標に集中する
ファルトレックのトレーニングにはさまざまな方法があります。 30 秒や 60 秒の短くて速い走りや、長時間の楽な、安定した走りと組み合わせることができます。
あるいは、5 分、10 分、さらには 20 分以上の長い走りを、短い回復と合わせて行うこともできます。自分の目標のレースを基に考えてください。
マラソンの場合は、全体に長く走ることを意識して、セットで速い走りを組み込むとよいでしょう。短いレースに向けたトレーニングを行っている場合は、30 秒から 4 分の間でうまく組み合わせて取り組むと効果的です。
よりハードなセッション用の「フロート」
ファルトレクのトレーニングでの、遅いスピードの区間は重要な回復の時間です。これは、きついトレーニングと同じくらい重要であると認識しておいてください。
ファルトレクに慣れてきて、更なるトレーニングの効果を得たい場合は、「フロート」リカバリ(回復)を試してください。フロートとは、ゆっくりなジョギングで回復を図るのではなく、ジョギング以上、または中程度の速さを入れるセットのことです。速いスピードの間にフロートを入れて、それをセットとして走るトレーニングです。
要は、完全な回復を目指すのでは無く、比較的きつい負荷を回復の時間に課すということです。そうすることによって、別のストレスが生じ、トレーニングの効果が実感できるはずです。
回復を大切にする
ファルトレクは、比較的自由にトレーニングを行い、リラックスできます。
しかし、トレーニング週間の中では依然としてハードなセッションであるため、注意する必要があります。
きついファルトレクのトレーニングをした場合は、その間には、少なくとも 1 日は楽な日を設けるようにしてください。一日きついトレーニングをした次の日は、休息日にして回復をはかり、そしてまたきついトレーニングの日を設けるということです。
そのようなきついトレーニングの間に 2 日、さらには 3 日は楽な日を置いたほうが、トレーニングの効果が高いということを覚えておいてください。
5つの重要なファルトレックワークアウト
自然環境や人工物を目印に利用
コース上の自然や建物などを目標に走る方法。上り下りのあるコースや、様々な地形を選択し、15 秒から 4 分間のハードの走りを 10 ~ 25 のセットを組んで走る方法。回復中は楽に、または安定して走りましょう。
次のレベルのトレーニングへの架け橋
きついインターバル走を始める前のワークアウトとしてのファルトレク。これは、トレーニングの初期段階にも最適なトレーニング方法です。例としては、30 秒をハードな走りをして、その後に90 秒をゆっくりと走る。これを1セットとして、10 ~ 15 回繰り返します。十分なウォームアップとクールダウンを行ってからしてください。
慣れてきたら、 1 分間ハード、1 分間ゆっくりというセットにしていきます。
「モナ」ファルトレック
オーストラリアの長距離ランナー、スティーブ・モネゲッティ(Steve Moneghetti)が使用したセッションで、これは多彩な 42 分間のセッションです。短いレースに焦点を合わせている場合は、「ゆっくり」のペースを少し遅くし、「ハード」のペースを上げます。長距離をレースする場合は、「ゆっくり」セクションを安定して走行してください。
- 10分 ウオームアップ
- 90 秒「ハード」, 90 秒「ゆっくり」x 2
- 60 秒「ハード」, 60 秒「ゆっくり」x 4
- 30 秒「ハード」, 60 秒「ゆっくり」 x 4
- 15 秒「ハード」, 15 秒「ゆっくり」 x 4
- 10分 ウオームダウン
ミックス
このセッションは、5 ~ 10km またはクロスカントリー レースに最適です。
6、5、4、3、2、1 分間の取り組みで、進むにつれて速くなり、間に 90 秒の「ゆっくり」なまたは安定したランニングが設けます。または、3分/2分/1分を4セット行い、セットの間に60〜90秒の「ゆっくり」を取り入れます。
マラソン中心
厳密には「ファルトレク」ではありませんが、マラソンの最後の 10km に向けた準備としては有効です。マラソンの取り組みでは 4km を 4 ~ 5 セット、各セットの間に 1km のゆっくりの区間を入れます。
私見
このファルトレクというトレーニングは、日本のランナーにはあまり知名度は高くあないようですが、海外では割と人気がある練習のようです。特にマラソンに強いケニアの選手の間では定番となっている練習メニューとのこと。
ケニアでは起伏のある未舗装のコースを、みんなでスピードの変化をつけながら走るのが一般的で、世界記録を狙うトップ選手から将来マラソンランナーを目指す若者まで多くのランナーがファルトレクを取り入れて練習しているようです。
ファルトレクは様々な効果があるようです。例えば、①持久力のアップ、②スピード強化、③ペース変化に対応、④脚力強化でマラソン終盤に強くなる、などがあります。
ファルトレクというトレーニングが馴染みがないといっても、例えば電柱を目標に走るとか、そういう経験はないでしょうか。苦しくなってきたときに、次の電柱までの約100mはキロ4分半のペースで頑張ろう、とか決めて走ったことはありませんか。
ロング走、テンポ走やインターバル走など色々な練習方法がありますが、同じトレーニングをしていると、身体が慣れてきて練習効果が下がってくることがあります。そういう時に、ファルトレクのような新しいトレーニングを試してみるのも次なる体力向上に効果があるかもしれません。
身体に刺激をいれるという意味でも一度は取り入れてみてください。
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