和魂洋才

「史上最高」は一人じゃない ─ Mark Allenが語る、偉大さの4つの形

トライアスロン
https://today.ucsd.edu/story/find-that-pursuit

「史上最高の選手は誰だろう?」

トライアスロンの話になると、ときどきこんな話題になることがあります。メダルの数、世界タイトル、時代背景……それぞれの視点から、お気に入りの選手を語り合うことが特に酒の席でよくある光景だとおもいます。

トライアスロン界のレジェンド、Mark Allenが最近Substackに投稿した記事「Ode to the GOAT(s)」は、そんな問いにMarkらしい視点で答えてくれるものでしたので、今回はこの記事の要約を載せたいと思います。

GOATという言葉

GOATとは “Greatest of All Time”(史上最高)の略です。

Markはこう書いています。「偉大さとは、頂上にひとりしか立てない山ではない」と。

たしかに、トライアスロンはショートコースからロングコースまで、距離も時代も、求められる能力もずいぶん違います。誰か一人を「最高」と決めることは、むしろそれぞれの選手が持つ多様な偉大さを見えにくくしてしまうのかもしれません。

だからMarkはずっと、GOATをひとりに絞ることに慎重だったと言います。

「ひとつの偉大さを信じないからではない。あまりにも多くの形の偉大さを信じているから」

4人のレジェンドが残したもの

記事の中でMarkが取り上げたのは、4人の選手です。

ヤン・フロデノ (Jan Frodeno) ── 完璧(Completeness)

オリンピック金メダル、アイアンマン世界タイトル、70.3世界タイトルを制覇。力任せではなく、洗練されたエレガントさと緻密な戦略で、ロングコースに新しいプロフェッショナリズムの基準をつくり上げました。

Markの言葉を借りれば、「強さは勝利をもたらす。しかし完璧さは基準そのものを変える」。

アリスター・ブラウンリー (Alistair Brownlee) ── 闘志(Fire)

オリンピック連覇を達成。ランまで体力を温存する従来の戦術にとらわれず、スイムやバイクの序盤から限界まで攻め続けるスタイルで、ショートコースのレース展開を大きく変えました。

「偉大さとは、常に洗練されているわけではない。時に焦れったく、時に挑発的だ」とMarkは書いています。

デイヴ・スコット (Dave Scott) ── 礎(Foundation)

アイアンマン世界選手権を6度制覇。科学的なトレーニングやデータがまだほとんど存在しなかった時代に、過酷なレースを単なる生存競争から「プロスポーツ」の域へと押し上げました。

現代のトライアスロンが当たり前のように立っているその地面を、彼は自らつくり上げたのだとおもいます。

クリスティアン・ブルメンフェルト (Kristian Blummenfelt) ── 拡張(Expansion)

オリンピック、世界選手権、アイアンマンを網羅。これまでの常識や体型のテンプレートにとらわれず、徹底的な科学的アプローチとデータ分析で、異なるレースフォーマット間の壁を打ち破り続けています。

「許可」を与えた人たち

Markがこの記事でいちばん伝えたかったことは、タイトルの数ではないとおもいます。

偉大な選手たちが次の世代に残したのは、記録でも栄光でもなく、「これまでの常識にとらわれず、新しい方法で挑んでいい」という許可(Permission)だった、とMarkは書いています。

GOATとは、頂点に君臨する者の称号ではなく、スポーツの可能性そのものを広げた人への、静かな敬意の言葉なのかもしれません。そして、それはきっと、プロだけに向けられた言葉ではないように思います。

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